選挙ポスターは候補者の名前や思いを有権者へ伝えるために欠かせない存在です。
選挙期間中には街角に設置された掲示板で見かけることになりますが、ポスターのサイズがある程度統一されている様子が目に留まります。
そこで、本記事では選挙ポスターのサイズ規定について、選挙の種類別に公職選挙法にも触れながら詳しく紹介します。
選挙期間中には街角で各候補者の選挙ポスターが貼られていますが、候補者・政党等は違えどポスターのサイズには規定が設けられていることにお気付きでしょうか。
実は、選挙のポスターのサイズは「公職選挙法」によって制限が設けられています。注目度の高い都知事選でも、多数の候補者が出馬する国政選挙でも、各候補者のポスターのサイズには決まりがあるのです。
こうした法律によるサイズの規定は、候補者の資金に寄るところなく公平・更生に選挙活動が行われることを目的に設けられています。候補者の顔や名前などを広く公平に告知できるツールであるからこそ、むやみに大きくできないようにサイズの制限があるのです。
では、具体的には選挙ポスターにどのような規格が設けられているのでしょうか。詳しくは以下です。
選挙運動に欠かせないポスターには、以下に挙げる3つの規格とサイズが設けられています。選挙運動ポスターとは「選挙期間中に貼られるポスター」を意味し、選挙活動では票につながる重要なツールの1つです。詳しい内容は以下です。
「選挙運動用ポスター」とは、一般的に広く知られている選挙時に見かけるポスターのことです。市区町村や府議・県議会選挙、市町村の首長選挙(都道府県知事除く)、そして国政では参議院の比例選挙で使用できます。
選挙運動用ポスターのサイズは、「長さ42cm×幅30cm以内」です。
「個人演説会告知ポスター」とは、候補者である個人の演説会を告知することを記載しているポスターです。
サイズは「長さ42cm×幅40cm以内」です。都道府県知事選挙、参議院選挙区、衆議院小選挙区選挙でのみ使用できます。
個人演説会を告知する内容であり、選挙運動とは作成目的が異なっているため、実際の選挙期間中には掲示できなくなります。
一方で、選挙期間以外に長く掲示しておくことができるため、自身の顔や政党、活動について広く知らせたい場合に欠かせません。
個人演説会を周知する目的であるため複数の弁士を記載できます。例として、候補者とその他の弁士1名の場合、演説の告知等の部分が3分の1以上である必要があります。
選挙の事前運動と判断されると公職選挙法の違反にみなされるため、デザイン面も注意しながら作成することが大切です。
「届け出政党使用ポスター」とは一般的に広く知られている選挙ポスターよりも大きく、サイズ規定は85cm×60cm以内です。確認団体(※)が使用するものとされ、衆議院小選挙区における候補者届出政党、衆議院比例代表で届出している政党が作成できます。
選挙運動期間中に特定の政治活動を行うことを認められた、公職選挙法上の要件をクリアしている政党・政治団体のこと。詳しくは(「※1 確認団体のポスター とは」に)後述します。
選挙運動用のポスターを実際に制作する際には、選挙の種類によってポスターサイズが異なる点を押さえておく必要があります。特に作成に不慣れな印刷会社へ依頼してしまうと、サイズに誤りが起きる可能性があるため注意が必要です。選挙にしっかりと備えておくためにも、以下をご確認ください。
選挙名 | 選挙運動用ポスター | サイズ(縦 × 横) |
---|---|---|
市町村府県議会議員 市長 |
○ | 420×300ミリ以内 選挙運動用と個人演説会告知用を合わせて420×400ミリ(420×100含)以内 |
都道府県知事 | – | ○ ※1 確認団体のポスター |
参議院議員 選挙区 |
– | ○ ※1 確認団体のポスター |
参議院議員 比例代表 |
○ | – ※1 確認団体のポスター |
衆議院議員 小選挙区 |
– | ○ ○ |
衆議院議員 比例代表 |
– | – ○ |
よく使われる 紙サイズ |
A3サイズ 420×297, 420×300 |
A2変形サイズ 420×400ミリ A1サイズ 841×594ミリ |
確認団体は先に少し触れたように、選挙期間中であっても特定の政治活動が認められる政治団体を指します。選挙期間に入ると選挙運動を最優先させる必要があり、通常行われているような政治団体の活動は大幅に制限を受けます。しかし、一定の要件をクリアしていれば活動可能となり、ポスターの掲示もできます。
選挙の候補者の名前や顔写真などを使用することはできませんが、カラーやキャッチフレーズなどのデザインを工夫することで選挙運動にかかわっていくことができます。
選挙運動で使用されるポスターの種類とサイズは、公職選挙法の制限を受けるため混同しやすく注意が必要です。そこで、この章ではポスターの種類やサイズについてわかりやすく表も用いて解説します。実際の制作時にぜひご参考ください
ポスターの種類 | サイズ(縦 × 横) | 掲示場所 |
---|---|---|
1. 選挙事務所用 ポスター |
縦350cm×横100cm以内 | 選挙事務所、立札、看板の類あわせて3個以内 |
2. 私有地用ポスター (個人宅・企業敷地) |
縦85cm×横60cm以内 | 他人の工作物に掲示する場合、居住者または所有者の承諾が必要 |
3. 連名ポスター (政党や複数候補者用) |
制限なし A1サイズ(縦841mm × 横594mm)が一般的 |
選挙期間中は掲示禁止 流れ込みポスターは可 |
4. 演説会や集会告知用ポスター | ◎縦273cm×横73cm以内
衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員、知事選挙の候補者向け |
個人演説会や集会場外(開催中)にポスター、立札、看板の類あわせて2個以内 会場内に数や大きさの制限なし |
5. 選挙掲示板用 ポスター |
縦42cm×横30cm以内 | 選挙用の公設掲示板 |
選挙事務所用のポスターは「縦350cm×横100cm以内」のものなら、選挙事務所ごとにポスター、立札および看板の類すべて含めて3個まで掲示できます。(公職選挙法第143条7項、同条1項1号、同条9項、同条9項および同条1項)
選挙カー(選挙運動用自動車)や船舶等にポスターを貼る場合は、選挙事務所用ポスターの規定ではなく演説会や集会告知用ポスターについてのサイズが該当します。「縦273cm×横73cm」です。数の制限はありません。(公職選挙法第143条9項、同条1項)
選挙運動用ポスターのうち、候補者個人のポスターは選挙によって公設のポスター掲示上以外に提示が禁じられていますが、建や塀などの他人の工作物への掲示は例外として認められています。「縦85cm×横60 cm以内」のポスター掲示が可能です。
ただし、居住者がいる場合は居住者、管理者がいる場合は管理者の承諾を必ず得てください。(公職選挙法第145条2項)
連名ポスターは選挙期間中の掲示は禁止されています。(公職選挙法第143条16項)
「屋外広告物条例」で規制をかけているケースも多く、現地の選挙管理委員会に確認の上で掲示が必要です。ただし、政党ポスターや弁士2名が掲載されている2連ポスターで候補者の氏名が類推されない者であれば掲示できる場合があります。(流れ込みポスター)
サイズに制限はありませんが、A1サイズ(縦84㎜ × 横594 ㎜)が一般的です。告知した演説会が終了したら速やかに撤去します。
演説会や集会告知用ポスターは、会場内外で設置できる個数や規定が異なるため注意が必要です。
・ 会場の外では、立札および看板の類は個人演説会5個以内、政党演説会は届け出た候補者に係る選挙区ごとに2個以内です。また、政党等演説会は届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに8個以内です。
・ポスターの 規格については、ポスター、立札および看板の類(屋内の演説会場内において使用するものを除く。)は「縦273cm×横73cm以内」で個人演説会等の会場の外に掲示できる立札および看板の類は、個人演説会等の開催中は必ず会場前に1個以上掲示しておく必要があります。
国政選挙の衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員および地方選挙における知事の選挙についてのみ、候補者が個人演説会の告知するためのポスターが認められています。
規格は「長さ42cm×幅10cm以内」で、個人演説会の日時と場所を記載しなければならず、公営のポスター掲示場にしか掲示できません。(公職選挙法第143条11項12項および同条1項)
なお、個人演説会告知用ポスターは、選挙運動用ポスターと合わせて長さ42cm×幅40cm以内で作成できますが、この場合も、個人演説会の日時と場所の掲載が必要です。
選挙期間中は公設の掲示板が設置されるため、選挙掲示用のポスターを貼ることが認められています。候補者を広く知ってもらうために必要不可欠であり、枚数が不足し掲示できていないと疑問を感じる有権者も多いため多めに作成し、不足なく貼りましょう。
なお公設の掲示場ごとに公職の候補者1人につきそれぞれ1枚を掲示するほかは掲示できなません。
サイズは公職選挙法第144条により「縦42cm×横30cm」であり、1㎜でも超えると使えなくなってしまいます。目安はA3サイズです。防水加工やユニークな形状にする場合は細心の注意を払いながら制作しましょう。
選挙ポスターは公職選挙法に沿って規制がかけられているため、国政選挙や地方選挙を迎える時に正しいサイズを把握しておく必要があります。では、今後法改正は行われる可能性はあるのでしょうか。
2024年9月時点では、NHKの報道にもあるように自民党や立憲民主党などを中心に公職選挙法におけるポスターの在り方について、品位を保つための条文化が議論されています。
2024年に行われた東京都都知事選では選挙ポスターに肌の露出など過激な内容も見られたり、なりすましとも見えてしまう掲示も発生しました。
このような動きから、今後サイズも含めてデザイン面でも有権者の混乱を防ぐことを目的に法改正が行われる可能性は高いでしょう。すでに報道では候補者名の明示なども含む改正が予想されています。
詳しくは公職選挙法の法改正をチェックしながら、最新のニュースや選挙ポスターの専門家に都度確認しながら制作にあたるようにしましょう。
本記事では選挙ポスターについて、公職選挙法にも触れながら種類や掲示場所などを詳しく紹介しました。
公職選挙法で厳しく制限を受けている選挙ポスターですが、特に確認団体ポスターにおいては各地域の選挙管理委員会によって判断が異なるため注意が必要です。
法に沿って作成していれば選挙管理委員会の審査でも再確認を受けても、掲示できます。作成前にサイズ・デザインに厳格なチェックを行っておくことがおすすめです。
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